「言葉には責任がある」——韓国ドラマ『ピノキオ』を見終えたあと、私の中にいちばん長く残ったのは、この一行でした。
嘘をつくとしゃっくりが出てしまう女性と、本当の名前を隠して生きてきた青年。この二人が、報道記者として同じ世界に立つ物語です。
結論から言うと、『ピノキオ』は胸キュンの恋愛ドラマと、社会派ドラマを一本で味わえる作品でした。甘いだけでも、重いだけでもありません。
この記事では、私が実際に見て感じたことを中心に、見どころを4つに分けて紹介します。最終話の結末には触れていません。ただし、第8話で描かれる「手のひらキス」の場面については、少し詳しく紹介しています。
『ピノキオ』は、恋愛だけでなく「報道と言葉の責任」まで描く、見ごたえのある全20話の韓国ドラマです。イ・ジョンソク演じるダルポの手のひらキスは第8話。イナが口を手でふさいでしまうからこそ、二人の戸惑いと一途さが際立つ名場面です。
『ピノキオ』はどんなドラマ?基本情報
| 放送 | 2014年11月12日〜2015年1月15日/韓国SBS |
|---|---|
| 話数 | 全20話 |
| 演出 | チョ・スウォン、シン・スンウ(『君の声が聞こえる』) |
| 脚本 | パク・ヘリョン(『君の声が聞こえる』『あなたが眠っている間に』) |
| 主演 | イ・ジョンソク(チェ・ダルポ/本名キ・ハミョン) パク・シネ(チェ・イナ) |
| 共演 | キム・ヨングァン(ソ・ボムジョ)/イ・ユビ(ユン・ユレ)/イ・ピルモ(ファン・ギョドン) |
| ジャンル | ロマンス/社会派ヒューマン |
注目してほしいのは、脚本のパク・ヘリョンさんです。『君の声が聞こえる』(心の声が聞こえる)、『あなたが眠っている間に』(予知夢を見る)、そして本作『ピノキオ』(嘘をつくとしゃっくりが出る)。「ふつうの人には持てないひとつの力」を持った人物を置いて、そこから人と人の誠実さを描く——3作品に共通するこの手ざわりが、私はとても好きです。
あらすじ(ネタバレなしで紹介)
大きな火災事故が起こり、救助に向かった消防隊長が行方不明になります。裏づけのないまま「隊長に責任がある」という報道が広がり、残された家族は世間から激しく責められることになりました。
その家族の少年が、キ・ハミョン。すべてを失った彼は、ある島でひとりの老人ゴンピルに助けられます。ゴンピルは亡くした息子と彼を重ね、ハミョンを「チェ・ダルポ」として家族に迎え入れます。こうして彼は、本当の名前と過去を隠したまま、別の人生を生きることになりました。
その島には、離婚した父とともにゴンピルのもとへやってきた少女、チェ・イナがいました。戸籍のうえではダルポはイナの伯父。けれど年齢は同い年という、少し不思議な関係です。
イナには、嘘をつくとしゃっくりが出てしまう「ピノキオ症候群」がありました。それでも報道記者になる夢をあきらめない彼女と、彼女を見つめ続けたダルポ。やがて二人はライバル局の記者となり、ダルポは自分の家族を奪ったあの事件の真相へ近づいていきます。
① 悲しい過去を背負うダルポ|イ・ジョンソクの“抑えた演技”に泣ける
『ピノキオ』のダルポは、明るくてよく笑う青年です。けれどその明るさは、悲しみを見せないための明るさでした。
家族を失ったこと、本当の名前を捨てたこと、育ててくれた人を心配させたくないこと。抱えているものを全部飲み込んだうえで、彼は笑うんです。
イ・ジョンソクさんは、この「言わない」芝居が本当にうまい俳優さんだと思います。声を荒らげる場面より、ふっと表情が止まる一瞬のほうが胸に刺さる。笑ったあとの目が笑っていない、あの数秒です。
では、そうやってずっと抑えてきた気持ちが、たった数秒であふれ出してしまう場面はどこだったのか。私にとっては、次のシーンでした。
② 口を塞いだ手のひらにキス(第8話)——感情があふれた忘れられない場面
『ピノキオ』で、私が今でも忘れられない場面があります。
ある夜、ダルポがイナにゆっくり顔を近づけ、キスをしようとする場面です。
ところがイナは、とっさに自分の口を手で塞いでしまいます。
その瞬間、ダルポは無理にその手をどけるのではなく、イナが唇を隠したその手のひらに、そっとキスをする。
私はこのシーンが、とても切なくて印象に残りました。
近づきたいのに、今までの関係を壊すのが怖い。
そんな二人の気持ちが、ほんの数秒の仕草の中に全部詰まっているように感じました。
恋愛ドラマには、長いセリフよりも、ひとつの視線や仕草だけで、それまで積み重ねてきた感情があふれ出す瞬間があります。
私にとって『ピノキオ』では、まさにこの場面でした。
「好き」と言わなくても、もう気持ちは隠せない
このシーンがさらに切ないのは、『ピノキオ』という作品のテーマそのものと重なっているからです。
イナは、嘘をつくとしゃっくりが出てしまう女性。自分の気持ちをごまかそうとしても、身体が「それは本心じゃない」と教えてしまいます。
一方のダルポは、本当の名前も悲しい過去も隠し、長い間“別の人生”を生きてきた青年です。
そんな二人だからこそ、「好き」という一言より、口を塞ぐイナの手と、その手のひらにキスをするダルポのほうが、ずっと雄弁に見えるんです。
言葉では隠そうとしても、感情までは隠せない。
切なくて、もどかしくて、それでも二人の距離が確かに変わったことが分かる。恋愛ドラマを見ていて「この瞬間を待っていた」と思わせてくれる、私の大好きなシーンです。
この手のひらキスが描かれるのは第8話です。「『ピノキオ』のキスシーンは何話だった?」と探していた方は、ぜひこの回を見返してみてください。
では、なぜ二人はここまで気持ちを隠さなければならなかったのか。その鍵になるのが、イナの“体質”です。
③ 嘘をつくとしゃっくりが出る|“ピノキオ症候群”という設定の面白さ
イナが抱えるピノキオ症候群は、嘘をつくとしゃっくりが出てしまうという設定です。ここでいう「ピノキオ症候群」は、実在する医学的な病名ではなく、ドラマの中だけに登場する架空の体質です。
最初は「かわいい設定だな」と思って見ていました。ところが話が進むほど、この設定がじわじわ効いてきます。
それとも、やさしい嘘さえつけないぶん、苦しいのか。
相手を傷つけないための嘘も、その場をおさめるための嘘も、イナは簡単には隠し通せません。就職の面接でも、好きな人の前でも、しゃっくりによって本心を見抜かれてしまうことがあります。
しかも彼女が目指すのは、事実を伝える報道記者です。嘘をつけない人が、嘘と隣り合わせの世界で働く。この組み合わせが、物語をぐっと面白くしています。
そしてこの設定は、やがて作品全体のテーマにつながっていきます。「嘘」と「事実」を扱う仕事とは何なのか、という問いです。
④ 言葉には責任がある|報道を問う社会派の深さ
『ピノキオ』がただの恋愛ドラマで終わらないのは、ここです。
物語の出発点は、裏づけの取れていない報道でした。誰かが軽い気持ちで口にした言葉が、ひとつの家族の人生を丸ごと変えてしまう。ダルポが背負っている悲しみは、そこから始まっています。
見ていて何度も考えさせられました。事実だと思って伝えたことが、本当に事実だったのか。伝えられた側は、そのあとどう生きていくのか。
これは2014年の作品ですが、SNSで誰もが発信できる今のほうが、むしろ刺さる内容だと思います。言葉には責任がある——記者だけの話ではありませんよね。
恋で心をつかんでおいて、最後に「あなたの言葉は大丈夫?」と静かに問いかけてくる。『ピノキオ』はそういうドラマなんじゃ。
『ピノキオ』はこんな人におすすめ
- 切なさが長く続く、じれったい恋愛が好きな人
- イ・ジョンソクさんの“抑えた演技”をじっくり見たい人
- 恋愛だけでなく、考えさせられるテーマも欲しい人
- 『君の声が聞こえる』『あなたが眠っている間に』が好きだった人
- 全20話をじっくり追いかける長編が苦にならない人
逆に、ふんわり明るいラブコメだけを求めている方には、少し重く感じる場面があるかもしれません。そこも含めて“見ごたえのある作品”だと思っています。
『ピノキオ』はどこで見られる?配信情報
『ピノキオ』は放送から時間が経った作品ですが、いまも日本語字幕つきで視聴できます。Leminoプレミアムでの配信は公式ページで確認できました。そのほか、U-NEXTやDisney+でも配信されています。
ただし、見放題かレンタルか、そもそも配信対象かどうかは時期によって変わります。視聴前に、必ず各サービスの公式ページで最新の配信状況をご確認ください。(この記事の配信情報は2026年8月時点のものです)
まとめ|『ピノキオ』は面白い?
『ピノキオ』は面白い?と聞かれたら、私は迷わず「面白い」と答えます。
嘘をつけないイナと、名前を隠して生きてきたダルポ。相性が良いはずのない二人が、それでも惹かれ合っていく。その距離が縮まる瞬間が、あの手のひらへのキスでした。
恋愛で心をつかまれて、最後に言葉の重さを考えさせられる。見終わったあと、しばらく余韻が残るドラマです。
ダルポのように、過去に傷を抱えながら誰かを守ろうとする男性に惹かれた方は、イ・ジョンソクさんの他の作品もきっと刺さります。心の声が聞こえる青年を演じた『君の声が聞こえる』は、『ピノキオ』と同じ脚本家×演出コンビの作品。ダルポとはまた違う一途さが見られます。



コメント